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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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今月のお題は「あやかし」
ここぞとばかりに書きすぎました(^^;)


【983】 天狗の気配り

「朝だぜ、旦那」
烏天狗に起こされても天狗はぴくりとも動かない。
昨夜は犬神と飲んでいたらしくて、帰ってきたのは明け方近くだった。
だが部屋の隅に干物の包みを見つけて、烏天狗は苦笑した。
豪快な体に似合わず神経が細かいのが可笑しかった。


【984】 天邪鬼

本当のことを言ったって誰も本気にしないんだ。
だったら僕は嘘だけつこう。
そう言って、天邪鬼は二度と本当の気持ちを言いませんでした。
胸が押し潰されても笑って冗談を言っていました。
だから彼が消えてしまったときも誰も心配したりしませんでした。


【985】 蛍袋の花鬼

蛍袋の花鬼が手を伸ばすと蛍が指先に止まって明滅を繰り返した。
それをそっと花に籠めて彼女は囁く。
「道を照らしてやっておくれ」
そしてそれを道に迷った旅人に手渡した。
あやかしに惑わされそうな夜は、蛍袋を一輪身につけていると良いだろう。


【986】 河童、家を出る

水の底で水面を見上げる日々。
「俺、こんな生活でいいのかな」
呟く河童に仲間は嗤う。
外に出たら死んでしまうと。
だが、昔は河原で子供達と遊んだもんだろう。
「お前らはひきこもってろ!俺は外へ行く!」
水面の太陽がおいでおいでと呼んでいた。


【987】 九尾

「お嬢、何してるんだ?」
「動いちゃダメ」
妖狐が聞くと、座敷童はもふもふした妖狐の尻尾に抱きついてくる。
「尻尾数えるの!」
三つまでしかわからぬくせに?
苦笑して九本の尻尾で座敷童をくすぐると、陽射しが溢れる縁側に笑い声が弾けた。


【988】 持ち逃げ禁止

「待て」
「ひっ!」
犬神は煎餅の袋を抱えて逃げようとする煎餅小僧をつまみ上げた。
「煎餅は置いて行け」
「仲間が食べられるのは忍びないんで」
「お前以外はただの煎餅だ」
「他人とは思えないんでさ」
「歩き出してから言え」
袋は没収された。


【989】 雪女

「やっと見つけた」
俺は万年雪に隠された社にたどり着いた。
「会ってくれないのか?」
扉に向かって囁くと彼女は姿を現した。
純白に銀糸の煌めく着物。銀色の髪。
「雪女に惚れるなんてバカだよ」
「そう言うなよ」
彼女の唇はなぜか暖かかった。


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都々逸 HOME 招き猫

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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