忍者ブログ

宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

[63]  [64]  [65]  [66]  [67]  [68]  [69]  [70]  [71]  [72]  [73

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【557】 だから、ねえ・・・

抜けるようだった空に薄い沙のような雲がかかるようになると、季節は秋から冬へと移る。
ぼんやりとした陽光は、まるで空気を温めようという気力が感じられない。
だからねえ、君であったまっていいかな?
僕の精一杯の言葉への返事は、ハグじゃなくて拳だった。

手を繋ぎたい程度のことに懸命に言い訳を考えて、口に出したらあんまり考えすぎて逆にストレートすぎて照れた相手に殴られるとか、そんな墓穴堀りシチュエーション。

【558】 つきのあめ、ほしのあめ

きん、と音をたてるほど冷えた空気にさらされると、月や星の光が凍って落ちてくることがある。
金色のきらきらした欠片は少しでも暖まると溶けて光に戻ってしまうから、手を使わないで僕らはぱくりとそれに食いつく。
口の中で溶けると、しゅわりと弾ける感じがして少し甘いんだ。

冷たい空気の日は、何もかも澄んでいる気がします。
口を開けて待っていたら、本当に月の光も飴になって降ってくるかもしれません。

無性に書きたくなったので、botアカでついのべを。
ブログと違って呟くという手軽さが好きです。
久しぶりにのぞいたら、ついのべクラスタも随分とジャンルが多岐に渡っていました。
自分のカラーとして、時代物という選択肢はまあまあではないかなと思っています。
需要があるかは別にして、ですけどね(^^;)。

いつも拍手ありがとうございます。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

PR
【556】

 経師屋の仕事と言うと、ふすま・障子の張替えや掛軸の表装、和本の装丁なんかが仕事だが、これはさすがに専門外だろう、と俺は途方に暮れていた。
 花街随一の妓楼「宵月楼」の主人は、おもねるでもなく脅すでもなく、ほんの茶飲み話のように微笑んで上質な紙を俺の前に置く。
「護符と言ったって、神仏の加護をほしいわけじゃございません」
 湯飲みを両手で持ち、一口茶を含んで、また口を開く。
「欲しいのは、よこしまなものを近寄らせない絵です。例えば、鼠には猫、蛇には鷲、天敵となるものを魂を込めて描いていただきたいのです」
 穏やかに言いながらも、その目は鋭くこちらを探っている。
 これは、噂を聞いたんだなと俺は思い至ってため息をついた。
 絵を描くことで紙にものを封じ込める技を身につけたことは、誰にも言っていないつもりだったが。
 友である妖狐のしかめ面が脳裏に浮かんで、逆に俺の頭は冷えた。
 なるようになれ、だ。
「で、何を描けばよろしいんで」
 平静を装い訪ねると、主人はにやりと人の悪い笑みを浮かべた。
「悪しき心を持つ鬼には、天女を」
 ああ、そうかい。
 まったく食えない野郎だ。
 思うに俺の噂を半分も信じてはいないのだろう。試してものになればよし、ならなくてもそれなりの美人画を、しかも自分の妓楼の花魁を使って描かせれば、版元に売るつてはいくらでもあるだろう。どちらに転んでも出しただけの画料のもとはとるつもりなのだ。
 こちらも馬鹿正直に力を使うわけにはいかないが、小手先で誤魔化せる相手でもない。
 裏の人間にも繋がっているから、下手をうてば命が危うい。
 さて、どうするか。
 黙った俺に、主人は鷹揚に頷いて見せた。
「即答でなくともよろしいですよ。花魁の顔見せもかねて、三日後に使いをやりましょう」
 逃げるなら、それまでに。
 そう言われているようで、俺は逆に笑みをうかべた。
「お待ちしております」
 受けてたってやる、くそじじい。
 狐にこっぴどく叱られそうだなと思い至った時には、後の祭りだった。


お題: 「花街」、「護符」、「経師屋」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
おかしい。
時代物も書かなきゃ、と思って始めたのに、刀も侍も出てこない・・・w
一応、江戸の話っぽいかんじということでご容赦ください。
出てくる妖狐は琥珀さんです。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

【554】 万華鏡

季節が巡るたび、違う君に出会う。
春の君、夏の君、秋の君、冬の君。
いろんな君は万華鏡のように表情を変える。
そうやって君を少しずつ知って、そのたびにどんどん好きになる。
ねえ、季節が一巡りしてまた春が来る頃、僕はどれだけ君を好きになっているかな。

お題:ついのべデー12月「一巡、ふりだしに戻る」

【555】 仇討ち

それは永遠の連鎖。
親の仇を子が討ち、討たれた仇の子がその相手を仇と狙い、終わることなく受け継がれる。
終わらせるにはこれしかない。
俺はお前の刃を正面から受け止めた。
俺に身寄りはない。これで振り出しに戻る。
泣くなよ。約束だろう?
お前は幸せになれ。

お題:ついのべデー12月「一巡、ふりだしに戻る」
140字に入りきらずに苦労しました。
もっと文章を足して載せたほうがいいんだろうけど、これはこれで残しておきます。
ふくらんだら、加筆してみるつもりです。

参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

【550】 君を待つ

君は人生を一巡りすると、満ち足りて僕のそばから消える。
ゆっくりと魂は旅をして、また僕のところへ戻ってくる。
あやかしゆえに長い長い時を生きる僕は、ずっとそれをこの世界で待っている。
今度はどんな君と出会えるんだろう、と胸を高鳴らせながら。

お題:ついのべデー12月「一巡、ふりだしに戻る」
うちの猫又は、一人の女性をずっと愛しているのです。
相手は人間なので、転生してまた出会って恋をするのです。

【551】 猫

わがままで、気まぐれで、天邪鬼。
ほんとは甘えたいけど素直になれなくて、尻尾を振ってちらりと上目遣いに見上げると、わかってるよって笑顔が降ってきて、僕は慌てて目をそらす。
全部お見通しの表情が癪に障るけど、仕方ないから撫でられてあげるよ。

お題:ついのべデーサブ企画「私の漢字」
漢字一字からついのべを書こう、という企画。
猫は甘えたいけど自分からあまり行かないイメージ。でも、心を開いちゃえばべったり、という感じ。
あくまでイメージです。飼ったことないから(^^;)。

【552】 犬

ただ一人と決めたからには、俺がこの手で守るのだと心に誓っている。
だが時々、俺の方が守られているのではないかと思うことがある。
春の陽射しのような微笑みは、俺を包み込み癒してくれる。
その果てしない優しさに、俺はいつもかなわないと思うのだ。

お題:ついのべデーサブ企画「私の漢字」
犬は結構序列をつけるので、例えば小さな子だとあきらかに自分が上だと意識しているのがわかりますね。
人間が自分より大きくても、後から生まれたら妹や弟だと思ってますw
これは、実体験www

【553】 狐

 気をつけな。俺は稲荷の使いじゃねえ。
人を煙に巻く方のたちの悪い化け狐だ。
そう言ったって、今時人の方がよっぽどたちが悪いとか言ってちっとも警戒しやがらねえ。
あんまり俺に懐いたら、ほっとけねえだろう。
油揚げと引き換えに面倒くらいはみてやるよ。

お題:ついのべデーサブ企画「私の漢字」
これだけ、もろうちの琥珀さんですね(^^;)。
ほっとけない体質なんです。
自分は妖狐だと斜に構えていますが、面倒見はいいですよ。

というわけで、今月のついのべデーを早々にまとめて、終了です。
いつも拍手ありがとうございます。
恋愛物は現代だったり、おじぷらすもだけど、あやかしに関係ないものも多々で、あやかし好きさんが見に来たら期待はずれかもしれないですね。
すみません、ジャンル雑多です(^^;)。
その中で、一つでも「これ好きだなあ」と思ってもらえたら、本望です。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

【549】

 一人暮らしの部屋はがらんとしていて、時々無性に君の声がききたくなるから、僕は君に電話する。
 西日が差し込んでオレンジ色に染まるキッチンの床に座り込んで、膝を抱えて長電話。
 耳元ではじける君の笑い声が、僕の心にしみ込んでいく。
「ねえ、月食みた?」
「すごかったよね。赤い月」
「それより、星がきれいでさ」
 他愛もない話をして過ごす時間が、とても嬉しい。
 でも、やっぱり君の声を聞くと、会いたくなって困っちゃうな。
「今度の休み、会いに行っていい?」
 こらえきれずにそう言った途端、耳元と玄関から同時にチャイムの音がした。

お題:「夕方のキッチン」で登場人物が「電話する」、「月」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927 #rendai

遠恋風味で。
お題がお題なだけに、現代風です。
あやかしものは、思いついたら後で。
最近、忙しくてなかなかゆっくり時間を取れません。
何をしているかは「日々徒然」に書いてますが、主にゲームと編み物です(^^;)。

オジプラス。
お気に入りしてもらったりしているようで、ありがとうございます。
しかし、「僕」が書きやすいものだから、なかなかおじさんは難しくて。
おじさん視点だと「俺」だろうし、女の子視点と言うのもなかなか気恥ずかしいものがありますしね。
でも、「生意気盛り VS おじさん」とか、「おしゃまな小さな女の子 VS おじさん」と言うのもなかなか書いてて楽しいんではないかと(^^)。
あとは、武芸者か忍者。
姫と護衛の剣客っつうのもおいしいですかねw


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

前のページ 次のページ

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
カウンター
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

忍者ブログ [PR]
template by repe