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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【815】 雷獣

それはどう見ても小型犬くらいの大きさの神社の狛犬だった。
それが宙を駆け回り嬉しげに尻尾をふっている。
「なんだそれ」
「失礼な奴じゃの。雷獣じゃ。我の騎獣じゃぞ」
雨師は得意気だが、よく見ればたてがみに稲妻が走っている。
「ほれ挨拶せえ」
「待て!近寄るな!感電する!」

本当の「雷獣」はものすごくでかいあやかしだとどこかで読んだ気がしますが、まあ、雷属性の獣、という解釈でお願いします。


【816】 花の季節

嵐かとまごうばかりの桜雨 出会いの記憶も別れの嘘も すべて流して虚ろになって 散る花吹雪と空を舞う


【817】 僕のもの

神様は僕を赦すだろうか。僕は首を振り、薄く笑みを浮かべた。赦される必要などありはしないじゃないか。神様の花嫁を横取りしたのだから。足元には愛しい君が眠っている。胸元の紅い薔薇はゆっくりと白い肌を染めていく。そう、誰にも渡さない。永遠に君は僕のものだ。

書き出しをお借りして。


【818】 春の宵

桜吹雪に君見失い 一人さまよう 薄紅に 視界塞がれ足をとられて 倒れた僕を花びらが 覆い隠した春の宵


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【810】 雨師と花見

「桜はいいのお」
雨師がうっとりと満開の桜に見とれている。
「春が来た!という実感がわくのお」
「そうだな」
俺は傘をさしたまま桜の下を歩いていった。
この雨で花見客はいない。
頭上で雨師がそっと花に触れてはくすくす笑っているのを見たら、二人占めってのも悪くない気がした。

春の嵐の日に。


【811】 留守番

ただいま、と告げる待ち焦がれた声に僕は伏せていた顔をあげる。本当はとんでいってお帰りって言いたいけど、君がいなくて寂しがってたなんて思われるのも癪だからわざとのんびり歩いてく。でも玄関に行ったら君が笑って僕を撫でるもんだからつい喉を鳴らしちゃった。

書き出しをお借りしたにゃ(^^)


【812】 護衛・妖

護衛なんだから君を守るのは当然でしょ。そんな泣きそうな顔しないの。確かに痛そうに見えるけど大丈夫。僕は腹に刺さった刃を無造作に抜いて放り投げた。みるみる傷が塞がっていく。化け物扱いされるこの特異体質も悪くないと思わせてくれたから、必ず君を守るよ。

書き出しをお借りして。ポジティブ編。


【813】 護衛・滅

護衛なんだから君を守るのは当然でしょ。でも突然の凶行に、突き出される刃を受け止めるので精一杯だった。力が抜ける。君が目を見開いて僕を見てる。ごめんね。こんなに血を流してたら怖いよね。だから後ろを向いて振り返らずに走るんだよ。無事で、よかった・・・。 

812と同じ書き出しで、ネガティブ編。
どちらもばあっと頭に浮かんで決めかねたので、両方書かせていただきました。


【814】 朔

僕は夜空の朔の月。君からは見えない黒い月。ひとりぼっちで空の上。誰も僕には気づかない。地上に君を探しても暗くてなにも見えなくて、ぽつりと呟きため息ひとつ。・・・ボクハココニイルヨ。

以前設定を書いていただいた朔月。
当方ではこういうイメージです。
黒猫のイメージだったのですが、黒猫はもう翡翠が居るんだよね(^^;)。
設定を練り直さないといけません。


ご訪問、拍手ありがとうございます(^^)


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【809】 

昼と夜が混じり合う時、僕の瞳が金色に変わる。
世界は琥珀に染まり、今まで見えなかった揺らめく影がそこここに現れる。
あれは人の怨念。
僕の瞳は日が落ちきるまでの間だけそれを視界にとらえる。
エアガンに気を込めてそれを撃ち抜き消し去るのが僕の仕事なんだ。

書き出しをお借りして。


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【808】 

「ふざけんな!あんた、仮にも俺の主を名乗るなら、あがけよ!」
 ひねくれていて、乱暴で、忠実だとはお世辞にもいえない。
 オサキ狐の分際で主を守りきれず、死ぬこともなく、幾人も渡り歩いて。
 それでも真っ直ぐに俺を見て手を差し伸べ、その馬鹿みたいに人のいい笑顔で俺の悪態なんか受け流し、ガキ扱いして頭を撫で・・・。
 まだ俺はなにもしていないだろう。
 俺は奥歯をかみ締めて主を見上げた。
 何もかもあきらめたように瞳がうつろで、ぞっとする。
 対峙している相手が薄笑いを浮かべた。
 奴は知っているんだ。俺の主が自分を殺せないと。だからわざと弄ぶように致命傷をつけずに刃を当てる。
 そのたびに鮮血が散る。
「・・・いいんだよ。彼に殺されることで、すべて終わるのだから」
 目の前が、怒りで染まった。耳も尻尾も毛が逆立って、妖気が溢れるのを止められない。人の姿をとどめているのもやっとなほど、俺はぶち切れていた。
「最初から死ぬつもりで俺を僕(しもべ)にしたのか!あんたはもう俺の存在を抱えてんだ!あんたが自分でそれを選んだんだ!勝手に放り出すことは許さない!」
 視界が歪んで、俺は目からなにかが溢れていることに気がついたが、それでも主をにらみつけた。
 ひねくれていて、乱暴で、忠実だとはお世辞にもいえない。
 ああ、そうだ。だから一匹くらい、主をひっぱたいて説教するオサキ狐が居てもいいじゃないか。
「あんたが嫌だと言っても、俺はあんたを死なせない。それが俺がここにいる意味だ。残念だったな。ざまあみろだ!」
 俺は両手を広げて主と敵の間に立った。
「邪魔だよ、狐」
 少し不機嫌そうに言う相手に、俺は嘲笑を浴びせてやった。
「絶対、殺させねえ」
 俺の力は大きくない。結界を張っても防ぎきれるとは思えない。それでも、手はある。
 俺は生命力を妖気に変えて結界を強化した。
「やめなさい!お前が死んでしまう」
 背後でやっと慌てた声を出す主を見れば、瞳に光が戻っている。心配で動揺している。ほんと、術者をするには優しすぎる。
「俺を・・・抱え込んだ罰だ・・・」
 命が蝋燭のように燃えていくのを感じる。結界を張りつつ守護の力を永続的に付与するような呪を刻み付ける。終われば俺は死ぬだろう。だが、それでいい。
「・・・もういい。もういいんです・・・紗月(さつき)」
 付けられた名に体が強張る。俺を止めようとする力が働いている。抗うのは無駄だと知りつつ、それでも俺は術を続ける。
「もう、十分お前の気持ちはわかりましたから・・・死んではならない」
 その一言で、俺の術が切れた。
「・・・邪魔・・・すんじゃ・・・ねえ・・・」
 その場に膝をついた俺の頭を、主がふわりと撫でた。
「・・・宵香(しょうか)・・・?」
 見上げた視線の先に、少し困った顔をした主の顔があった。
「まったく、お前がこんなに頑固だったとはね。ですが、お前を抱えて生きるのも悪くはない」
 血に染まった式服がひらりと舞い、主が俺の前に出た。
「茶番はおわり?」
 黙って俺達を見ていた敵が、まだ血の乾かない刀をぶら下げたまま問う。その声に、主は・・・宵香は笑みを浮かべた。
「ええ。お待たせしました。私のオサキ狐が泣くので、貴方に殺されるのはやめておきます。兄上」
「やっとその気になったんだね。じゃあ、本気で殺しにおいで」
「ええ、遠慮なく」
 殺気が膨れ上がり、そして戦いが幕を開けた。


お題:自分で作った書き出しと、「#4月10日は主従の日」(^^;)
そういうタグがツイッターでまわってきましてね。
とりあえず、祭りに理由は要らないぜ!ってことで乗っかってますw
もっと武将とか侍とか王と騎士とかその編がいいのかもしれないけど、うちクオリティっていうことで、術者としもべのオサキ狐にしてみました。
ワケありな兄弟もちょっと気に入ってますw


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【806】 桜鬼

桜の大木の下で桜鬼は耳を澄ました。この木は人の世からは少しずれた場所に存在するが故に人の目には触れぬが、これを始まりとして人の世の桜が回りだす。南から北へ。海辺から山へ。その花びらの吹雪く音に耳を澄まし、桜鬼は微笑みを浮かべた。今年も綺麗に咲き誇ったようだ、と。


【807】 降臨

どうか神よと乞うてはみたけれど、この世に神が存在するなどと信じていた訳じゃない。それはある種の呪文のようなもので、だから目の前に神が現れた時、僕はただ呆然としてしまった。「どうした。我を呼んだであろう?」神の美貌が僕の目の前で悠然と笑んだ。

書き出しをお借りして。


【808】 さくら さくら

さくら さくら 
世迷う僕の道を隠して花吹雪 
行きも帰りもわからぬままに 
夢幻の如き薄紅に 
包まれ朽ちてゆけるなら 
それもいいかとまぶたを閉じて 
君の面影だけを抱く


もうこの時期は、これでもかというほど桜祭り。
申し訳ないです(^^;)。


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宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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