忍者ブログ

宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

[105]  [104]  [103]  [102]  [101]  [100]  [99]  [98]  [97]  [96]  [95

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【223】

夕方、ひぐらしが鳴く庭で、寄り添っている二本の向日葵が妙に妬ましくて、思いきり水をぶっかける。
逞しい花はたいして揺らぎもせず、むしろ涼しげでますます腹がたつ。
君たちはずっと一緒でいいよね。
呼ばれて振り返ると、この時期だけしか来ないいとこが笑っていた。

【224】

飴は要らぬか。不思議な飴は。
食べれば半日、姿が変わる。
獣、花魁、侍、役者。
望みのものに姿を変えて、誰も気づかぬ。疑わぬ。
噂を聞いた殿様の大きな屋敷に呼ばれたが、飴売り迎えが来る前に、霞のように消え失せた。
時折噂が流れ来る、不思議な飴売り、今いずこ。

お題:
「屋敷」、「飴」、「飴売り」で創作しましょう。
http://shindanmaker.com/138578

【225】

フィルムが、ぷつんと音をたてて千切れた。
映写機の回るリングに合わせてくるくると回り、千切れた先がぱしりぱしりと乾いた音をたてて機械に打ち付けてる。
「もったいないな」
呟くと、技師は少し寂しげに苦笑した。
「今じゃ流行らんからなあ」
フィルムを外し、金属のケースに大事にしまう。
うやうやしくすらあるその動作には、今までの「ありがとう」と「ごめんなさい」と「おやすみ」が溢れていた。
「もう二度と出しちゃやれねえからな」
そう言って、かちりと金具をしめる。
もう「いつか」はないんだね。
それでもいつも通りに丁寧にしまわれたフィルムに、僕はそっとささやいた。

これからは自分だけの夢を見てね。
今まで、ありがとう。
さよなら。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
携帯用絵文字   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする:

Twitter Novel 8/5 HOME Twitter Novel 8/3

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
カウンター
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

忍者ブログ [PR]
template by repe